コーヒーの豆の種類が変わると部屋に立ち込める匂いが変わるのでわかる。変わる前のにおいがどこかにのこっているのだろう。だからといってその匂いを語ることができるわけじゃない。そういう意味で、その匂いはどこにもない。
大きな違いじゃないし、たいした豆でもないけれど、気をつけていたらそれくらいのことがわかるほどには違うし、それだけの経験も積んだ。たぶんほかのこともそんなだ。目立たない差異、言及するのが困難なほどささいな要素が無数に集まることで決定的な変化になる。たぶん変化はそういうささいで致命的なものばかりなのだ。
コーヒーに目を落とし、湯気を見る朝。