黄金旅風 飯嶋和一

黄金旅風

黄金旅風

雷電本紀」「神無き月十番目の夜」「始祖鳥記」とわくわく読まされてきた飯嶋和一の近作。今度は長崎に生を受けた商人が国際色豊かに世界を切り抜けていく様を堂々と描き出した作品だ。
血肉を持った生活者として江戸の怪物相撲取り「雷電」の生涯を魅力的に生き生きと描写し、月居(つきおれ)騎馬衆の剽悍さと栄光(そしてその挫折)の経緯と終焉を淡々と語り、「始祖鳥」となった男の周囲を多方向からぐるりと見渡してのけた冷静な筆致は、相変わらずこの作品でも安定している。この作者のなによりの売りはその清冽な筆致と、強固な視点だ。

たぶん作家はこれくらいのペースで書くのが本来あるべき姿なのだ。首を長くして次も待ってますよ。さてそれまでデビュー作の「汝ふたたび故郷へ帰れず 」でも探して待つとしようか・・・