遠回り

Blank2005-02-17

 本を四分の一ほど読み終えて席を立って外に出ると風が気持ちよかったのでいつもと違う道を通って歩いた。平日の夜は気持ちよい。すたすた歩いた。

 人通りは普段より少ない。誰もいない路地を抜けて、線路の上で通り過ぎる電車を立ち止まって少し眺めた。遠くのネオンがぼんやり光って、こちらの薄暗さが引き立たせていた。電車の通過音が跨線橋の上の風の強さをいやまして、急にすこし寒くなった。引き込み線に入って折り返していく地下鉄のパンタグラフがショートして、青白い光をときどき発して、その光も寒々しい。

 雑踏に顔はなく、それを眺める者にも顔はなく、街には結局誰もいない。