春、期待

 期待しているさなかほど、期待した地点から遥か遠くにいると感じる時はない。かといって待っていれば時間はゆっくり流れるかというとそうでもない。どうすりゃいいのよ、とか考えて、夜もすがら。早春の空、夜の雲。風が吹き払うみたいに晴れ渡ればいいのにね。

 見えもしない空を想い、耳を澄ませて不在のままの猫の気配を聞こうと試みる。何を見ているのかといえば、何も見ていないのだ。これが春の目。