あらかじめうしなわれた

 決して誰にも話すことが出来はしない嘘について考えていた。できない、と言うより、話してはいけない、というたぐい。そのことを話すこと、そのような行為そのものが害毒であるような行為。

 今のところは秘密を守り通している。これからもこうだといいのだけれど、まあなかなかに問屋はそうは卸すまい。身を切る嘘、捨て身の偽り。そういう痛みは自分だけで抱えればいい。本来そういうモノだし、その覚悟がないならホントのことだけで生きればいい。それは単純で日の当たる道だ。

 ウソは生きているかぎり澱のように音もなく沈殿し、降り積もる。せめてそれが、どこかで、誰かの、何かしらの幸福につながっていればいいのだけれど。もしくは、不運を回避できる力に。前を向くためのきっかけに。

 話してはいけないことなんて、いくら話しても尽きない。だからせめて、黙っているだけの力をください、とか思ってみたりするわけで。


 たぶんこういうのを、夢と呼ぶ。