翼を折る

 知り合いがなす術もなく壊れていくのを見ているのはとてもツライことだ。どんな道を通ってきたのか、その片鱗を知っているものとしては、そんな風になんてなりたくないのにという悲鳴と、同時に、その端正な顔に器用に浮かべているであろう薄ら笑いが目にみえる。それはとても寂しい表情だ。そんなに寂しいものなんて、この世の中にはそうそうありはしない。
 だが、なにができるというのか。手を縛ったのは自分なのだ。言葉の翼をもぎ取ったのは、自分自身なのだ。



 世界は遠い場所でゆっくりと壊れて、僕はそれを黙って見つめる。