あめあがり

 夜更けの雨も静かにやんで、夜明け前には音もない。窓を開けて煙草に火をともすと、ゆっくりと煙が外に流れていく。モニタの明かりに浮かぶ煙を目で追いながら、わずかに冷えた風のこととか、その他のややこしいこととか、寂しいこととか、そんな有象無象を考える。
 物事を考えるのには夜明け前は向いているようでいて実のところまるで不適切なので、ひとりよがりの思考は四方に拡散し、気がつけば煙草はすぐに消えている。断片的に浮かぶ表情。手のしぐさ。感触。

 やんだと思った雨はよく聞き入るとまだ静かに降り続いていたらしく、耳を澄ますとかすかに音は続いている。たぶん今日は日が昇っても雨になるのだろう。