旅をする人

この週末を利用して旅行をする人がいて、その報告をネットでしている。もちろん更新頻度は低くて、いわば櫛の歯が抜けたような情報しかとどかない。
けれどそれでけっこう満足していたりする。

国内旅行が好きなのでたまに発作的に出かけるのだけど、なにをしているのかというと、なんということもしていない。観光地を見るわけでもないし、なにかをするわけでもない。日常と違う空気を暮らすということ、移動すること。それが目的の旅行だったりする。

旅行レポートが精細にあるのもたのしいけれど、余白の大きな旅の報告なら、心はそこへ旅することができる。行ったことのある街ならなおさらだ。遠い昔、ディティールと全体像だけになって、骨組みを失ったあいまいな思い出。
そういうものが生まれるのなら、旅の話を聞くだけで、どこにでもいける。願わくばよい旅を。なにがよい旅なのかはいまだによくわからないけれど、なにかを発見していける旅を。表現できない、あいまいでまとまりのない、語れば語るほど肝心要の部分を言い落としてしまうような気がしてならなくなる、そんな体験に満ちた旅を。