ながらみとながれこ

Blank2004-12-30

明日はシチューにすると宣言すると彼女は悲鳴をあげた。同じメニューにするつもりだったらしい。同じだからといってどうということもないのだけれど(彼女は大阪、私は千葉。チャットの仲間だ)、そうやって戯れるというのも、まあ楽しいものだ。偽造されたじゃれあい。お互い、ゲームだとわかっている。
ゲームだから本気で遊ぶ。

「鳥にせずに牡蠣にしろ」と彼女が言う。「もう鶏肉買ってるんだよ」とこちらはかえす。実際、シチューにする必要さえないのだけどさ。たまねぎの加熱法、にんじんの加工、きのこについての講釈、じゃがいもの存在についての討議。熱の入った、しかし結局のところはどうにでもできる論争。上滑りなほど楽しい。だからといってうそじゃない。クリーム、牛乳、小麦粉、チーズ、食材の話題。話題は広がる。

貝の話から、「ながらみ」の話題になった。千葉の九十九里浜のあたりだとけっこう普通にみかける、というと「ながれこ」のことか?といわれる。こんどはこちらが「ながれこ」のことがわからない。わからないままに話は終わる。

調べてみると「ながらみ」とは「ダンベイキサゴ(ニシキウズガイ科)」の俗称らしい。→ダンベイキサゴ (ナガラミ) | 市場魚貝類図鑑
そして「ながれこ」とは「とこぶし」のことだそうだ(→トコブシ | 軟体 | 市場魚貝類図鑑)。世の中知らないことはおおい。

すれちがったまま、でも楽しく過ぎた会話も終わり、互いに回線を遠く離れてどこのだれかもわからなくなる。きっとまた逢うときには別の、同じくらいくだらない会話をするのだろう。互いにどこか醒めた目で、モニタをそれぞれ別の場所で見ながら、だけど心から楽しんで。

そしてその距離感は嫌いじゃない。