遠い道をゆっくりと独りで歩いていく。それはとても寒い道だ。でもそれは心地よい。歩く足を一歩ずつ確かめながら戻らずに歩く。目的地は遠い。

 空は低い。雲が多くて夜のようだ。月も星も太陽もでておらず、ただうすぼんやりとした明かりが辺りを不確かに照らす。そこを歩いていく。草も樹もなく、ただ灰色のうつろな影のような物だけが大地に禍々しく影を落とす。ここは呪われた土地なのだ。

 目的地は分からない。どこかに行こうとしているのだろう。それはどこかは分からないし、判る必要もないということを確信している。ただ歩く。着く気配は一向になく、着くことを求めてもいないらしい。人影はどこにも見えはしない。気配さえもない。

 という夢を見たのだとすればそういうのって出来過ぎた話で面白いんだろうなあ、とか言ってみる。