思案

読み取れない夢

夢の話を聞いたからか、夢を見た。その中で自分は見たこともない文章を書いている。よく読みとろうとするがぼやけていてあと少しのところで読み取れない。ただ、それが韻律を踏んだものであることは奇妙な確信とともに認識している。 単語は読み取れるが内容…

溺れる

もがくほどに遠ざかるという点で大部分の物事は海に似ている。溺れないように気をつけながら、浮かぶほかない(沈んでみたらまた全然違う世界が広がっていたりもする)。 とても広いひろがりはどこまで続いているのかさえ判らず、手近な陸地にしがみついてい…

片手の拍手

言葉で言っても通じないからといって言葉を捨てるのは間違っている。でも、言葉で通じることはとても難しい。そもそも通じ合うこと自体がとても難しいのだ。誤解、行き違い、齟齬、ずれる会話、そらされあう視線、見られぬ場所で言葉もなく流される涙。ここ…

実用的ではない

そのことを忘れないようにメモを残した。たいてい、記録するとそのことは跡形もなく忘れることができる。それは恐ろしいほど確実な手段だ。テストのときにもそれはいえる。つまり記録しておくことで覚えられると考えるのが間違っているのだ。書き記し、反復…

消え残る傷

とても丁寧な口調で礼を失し、義を欠くことを謝られた。上手だね、言葉の使い方が。でもその人のクシャミは「へっくしょん」と文字で書いたとおりの明瞭な発声で、なんだか変だと思った。くしゃみまではっきりしなくてもいいのに。ってそんなのたいしたこと…

あらかじめうしなわれた

決して誰にも話すことが出来はしない嘘について考えていた。できない、と言うより、話してはいけない、というたぐい。そのことを話すこと、そのような行為そのものが害毒であるような行為。 今のところは秘密を守り通している。これからもこうだといいのだけ…

それでも羽根は背中に

羽根があったらまず何をする?と昔ある人に質問された。なかなかに微妙かつ範囲の定かでない質問。あるいはレトリカルクエスチョンのたぐいだったのだろうけれどさ。 その時は、普通に地上を歩くかな、飛んでいてもきっと面倒だから、とかいった軽口で返事し…

終わらせないコントロール

楽しい事はすぐに終わるけれど終わらせないのは意志の力とほんのちょっとだけの偶然。 がんばれ、がんばろう、がんばるなよ。いろんな人がいて、ここにいて、いろいろあるけど、ありすぎるけれど、そんなすべてに、ありがとう、だね。

乾いた泉

眼球を潤すためだけに涙腺があるのならどれほどシンプルだったろう。潤すためにだけ喉があるのだとすればどれほどトラブルは少なかったろう。でも実際はそうはいかない。流れつづけたり、声も出なかったり、どうしようもなくなったりするのだ。 目を閉ざすた…

ゼロで割る

それはゼロで割るようなものだ。割り切ることはできない。だからこそ困るのだろう。こたえは出るようでいて、結局はどこまでいってもマガイモノだから。 だから求められるのはつまり、矛盾を矛盾として把握し、理解しようとせず、そのまま納得し、それと共存…

立ち入ること、立ち去ること

つまり、変化というものは一時に訪れるものではない。段階的にやってきて去るのだ。出会うにしても別れるにしても、そのものは一瞬のように思うけれど出会う前にはそれだけの前提があったりすることがザラだし、別れた後も余韻は幾度も波を起こす。よい波を…

よすが

あなたが昔の知り合いを忘れられないというエピソードだけが私にあなたへの興味を抱かせる。桜が花を枝が折れるまで咲かせるのをどんなにたっても忘れられないようなものだ。たとえ何年も経た冬のさなかでさえ。

撚糸

あなたの横糸は縦糸をカゲでささえるために存在しているのかもしれないけれど、わたしは横糸をひとつづつはっていくために縦糸をしかたなく撚っている。 問題をはんぶんとけたってことが、あなたには問題をはんぶんしか解かなかったとしか見えないなら、もう…

あいまいにする

語尾を乱してあいまいにすることは簡単だということくらい判っているのでしょう、と言われた。ただうなずく。そう、それは簡単だ。 だが率直になることはとても難しい。のぞき込んだ途端、何をしたかったのかなんて消えてしまうこともある。目を据えたとたん…

窓を閉じる

少しだけ窓を閉じて見てもいいかい。ときどきそういうことだってあってもいいかい。だってほら、あんなにも風が吹いているから。 ほこりだらけでも窓を閉じていてもいいかい。ガラスから外を見ていてもいいかい。だまっていてもいいかい。たまには、さ。 何…

暗い木立を抜けて

暗い森を抜けて帰る。風はわずかに吹いているようだが壊れかけの看板がくるくる回るだけで頬に明瞭に感じられるほどではない。 ゆるやかな坂を昇る。夜空に影絵のようにみえる木立のすき間から星が一つだけ見える。あれは何という星だろう。どんな星にも名前…

距離と価値

人というのは現金なもので、電話をかけても留守番電話だと逆に連絡をどうしてもとりたくなる。たいした用事じゃなかったとしても。むしろ、たいした用事じゃない時ほど。 昔ある知り合いが「電話の数がもしも半分だったら今より二倍好きだったかも」と言った…

緘黙

そう、春にはたいてい、少しだけ話しすぎてしまって後で後悔することになるのだ。言うべきではない言葉、取るべきではなかった態度。やらなきゃいいのに。 そうせずにいられる世界を少し考えてみて、すぐにやめた。

春、期待

期待しているさなかほど、期待した地点から遥か遠くにいると感じる時はない。かといって待っていれば時間はゆっくり流れるかというとそうでもない。どうすりゃいいのよ、とか考えて、夜もすがら。早春の空、夜の雲。風が吹き払うみたいに晴れ渡ればいいのに…

甘い果実

出会い系サイトに参加してみた知り合いが、ああいうのは自分には少しダメだなあ、と言っていた。少しばかり夢見がちな人にはそういうのも悪くはないとは思うので、いくつかの実際的な助言だけしてあとは話を聞いていた。 で、どうよ?楽しい友達はできた?と…

タコツボ

人は存外に器用なもので、自分のなかに穴を掘ることができるようだ。ドツボ。で、単純な作業がそうであるように、やりはじめるとそれは案外やめることができない。結局出ることができないほどに深い穴ができあがり、その底から彼もしくは彼女は、ぼんやりと…

オヤスミ

コーヒーを眠る前にゆっくりと飲む。脳味噌が寝ていく。夢のような青い空、白い雲。わたしたちは白くぬりつぶす、青すぎるこの空を、広すぎるこの世界を。骨の白、錠剤の白、睨む目玉の白目の白。脱色と漂白とシーツ。のんびりとコーヒーを飲んで、ゆっくり…

届くことを想定さえしない、というワガママ

読んだあとに煙草を一本吸って、それからさらに腕を組んで考えるけれど、やっぱりもう一本煙草をくわえて、でも火をつけるのを忘れてしまうというのをやってしまったことに気づいて苦笑してみたりする午前零時。世の中は結構複雑で、複雑であるその理由は、…

不在のよすが

かつて年配の同じ部署の方に静かな声で、君は何かに怒るように真面目に正確に歌うからねと言われたことを思い出したりする朝。そんななのか?そうなのか。 怒っているみたいだといわれることはあるけれど別に今さら何かに怒りを覚えたりするほどには実は今は…

納得の速度

若い頃ほど納得することに飢えている。それは、納得するということによって自分が成長してきた余韻に酔えるからだ。 酔いはすぐに醒める。その素早さ、まさに瞠目するほどの素早さ。 つながりなんてたいていが手ひどいウソだし、控えめに見ても、たいていす…

傾く日

うなずくことの意味と意味を求める意味を考えた午後、保留されたすべて。

楽しい日

騒いでいるときには他人といることを意識しないでいい。なので誰かと集まるときは半ば意識的に大人数で必要以上に盛り上げる、ということをするようになって久しい。だけれど人数が少ないとその手が使えない。そこがつかれる。他人は他人だ。 人によってはそ…

遠回り

本を四分の一ほど読み終えて席を立って外に出ると風が気持ちよかったのでいつもと違う道を通って歩いた。平日の夜は気持ちよい。すたすた歩いた。 人通りは普段より少ない。誰もいない路地を抜けて、線路の上で通り過ぎる電車を立ち止まって少し眺めた。遠く…

蟻地獄

同じ轍を踏みかけていることに気づくことは、さて、どれほどの意味があるのだろう。気付かないほうと気づいたほう、どちらのほうがマシなのだろうか。結局のところ、人間にできることなんてたいしたものでもないのかもしれないなあ、などと思ったりする昨今…

感想、あるいは独り言

なにがいいって、シンプルなのがなんといってもよい。バーチャルではないところがよい。かといって抽象性が不要なわけでもないところも、なかなかに面白い。まあ、すべて、そのあたりは必要なのだろうけれど。 縁のない事柄なのが目新しい。それはいまだにそ…